東洋エンジニアリング(TOYO、取締役社長 永松 治夫)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、三菱パワー株式会社、株式会社JERA、および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、木くず等を原料とした純バイオジェット燃料*1の製造技術(ガス化FT合成技術*2)開発に取り組み、生産したバイオジェット燃料を持続可能な代替航空燃料(SAF*3)として、商用フライト(2021年6月17日 日本航空株式会社/JL515 東京国際空港発→新千歳空港着)に世界で初めて供給しました。この燃料は、国際規格である「ASTM D7566」に適合していることが確認されています。
本プロジェクトは、NEDOがSAF商用化を視野に進める「バイオジェット燃料生産技術開発事業*4」による委託を受けて2017年度に着手し、原料となる木くず等を調達して純バイオジェット燃料を製造する一貫体制の実証と、燃料を航空機に給油するまでのサプライチェーンを具体化したものです。
このNEDO事業では、JERAの新名古屋火力発電所内(愛知県名古屋市)にパイロットプラント(原料処理量約0.7 t/日、合成燃料製造量約80L/日、うちジェット燃料27L/日)を建設し、木くず等を原料としたSAFを一貫製造する実証試験を行いました。JERAが原料調達とパイロットプラントの運転、三菱パワーが原料のガス化、TOYOが生成ガスから液体炭化水素燃料の製造(FT合成)、水素化分解*5、蒸留と混合*6以後のサプライチェーン構築を担当し、JAXAが製造されたSAFの燃焼特性試験を実施しました。木くず等から製造された純バイオジェット燃料は2020年8月に国際規格である「ASTM D7566 Annex1」に適合することを確認*7し、その後製造した燃料の全量(2,366リットル)が同規格に合格しました。さらにこれを既存の石油由来ジェット燃料(JET A-1)と混合したSAFも2021年3月に同規格に適合することを確認しました。
TOYOは、液体炭化水素製造の心臓部であるFT合成に米国Velocys社が基本技術を保有するマイクロチャンネルFT合成技術*8を採用しました。この技術は、従来型FT反応器から反応容積1/10の小型化を実現し、バイオマスガス化のような中小型プラントに適している上に、スケールアップも容易です。TOYOは2010年代、Velocys社と共同で実施した小型GTL*9 実証で最初の実績を作りました。同技術は今回のNEDOパイロットプラントにおいても高効率で安定した性能を発揮し、高品質のSAF、グリーンナフサ、グリーンディーゼルの製造に貢献しました。
国際民間航空機関(ICAO)をはじめとした航空業界は、航空機運航に伴う温室効果ガスの排出量削減による
地球温暖化抑止対策に取り組んでおり、SAFの導入は有効な手段の一つとして位置付けられています。
TOYOは今後もFT合成技術を核に据えて、商用規模のバイオジェット燃料製造技術の確立に向けた取り組みを推進し、航空分野におけるカーボンニュートラルと地球環境負荷低減に貢献していきます。
*2) FT(Fischer-Tropsch)合成:合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)から触媒を用いて液状炭化水素を合成する技術
*3) SAF: Sustainable Aviation Fuelの略
*4) バイオジェット燃料生産技術開発事業
事業概要: https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100127.html
事業期間:2017年度~2024年度
2020年度NEDO新エネルギー成果報告会: https://www.nedo.go.jp/events/FF_100129.html
*5) 水素化分解:UOP社/日揮ユニバーサル社より水素化分解用触媒の提供を受けて実装
*6) 混合:SAFを航空機に使用する際は、工業材料規格と試験法規格からなる国際標準化・規格設定機関であるASTM Internationalが定める各Annex規格に準拠し、石油由来ジェット燃料(JET A-1)と混合することが要件
*7) ASTM D7566 Annex 1:変換プロセス Fischer-Tropsch (FT)を対象とした規格
*8) マイクロチャンネルFT合成技術:Velocys社の技術。 TOYOは持続可能な代替航空燃料分野で同社と包括協定書を締結し、国内での独占使用権を有し、国外においても両社は相互に優先的パートナーとして協力する
https://www.toyo-eng.com/jp/ja/company/news/?n=780
*9) GTL(Gas to Liquid:天然ガスを合成ガスに転換し、FT合成を用いて灯軽油等に転換するプロセス、技術