重質油水素化分解プロセスの実証化に着手
東洋エンジニアリング株式会社(TEC、取締役社長 広瀬 俊彦)は、独自の重質油水素化分解プロセス(HTC:Hydrogen Transfer Cracking)の開発を進めており、このほどメキシコ国営石油 (PEMEX:Petroleos Mexicanos)関連の国立石油研究機関である IMP(Instituto Mexicano del Petroleo)との共同により触媒評価作業を実施し、本プロセスの早期実用化を目指すことで合意した。
メキシコに産するマヤ原油には、硫黄や窒素、重金属(ニッケル、バナジウム)等の不純物が多く含まれており、既存の水素化分解技術では触媒の活性低下が大きく、経済性が低かった。TECでは、細孔構造に特徴を持つ活性炭素に鉄を分散させた耐久性の高い安価な触媒および沸騰床型の反応器を用いることにより、100気圧程度の従来よりマイルドな条件下で、重金属等の不純物の除去率が高く、ナフサ、灯油・軽油などクリーンな燃料油留分をより多く生成する重質油の改質プロセスを可能とした。
昨今、限られた石油資源の有効利用と環境保全の重要性から、軽質でクリーンなガソリンや灯油、軽油の需要がますます増大する一方、重質な燃料油の需要は減少している。TECは、従来から重質油の改質技術の開発に取り組んでおり、クリーンな軽質油を高い収率で得る技術として、安価な鉄と炭素系触媒を使った重質油水素化分解(HTC)プロセスの開発を手がけている。今後の石油資源の枯渇問題に備えて、カナダ、ベネズエラなどに産する非在来型の石油や、メキシコ等に産する超重質油の改質に最適な技術として商業化を目指している。
今回の触媒評価作業に引き続き、平成14年度にもPEMEXのツーラ製油所において実証化プラントの設置が想定されている。なお、本技術の基礎研究は、平成6年~平成10年度までの間、石油産業活性化センターの補助事業として実施されていたものである。
TECはエネルギーならびに環境問題への取り組みを21世紀のキーワードとしており、よりクリーンなエネルギー生成技術への取り組みを強化していく。